主なアレルギー疾患
※動画右下のボタンを「<」「4つの矢印」の順で押すと(ボタンにカーソルを合わせてクリック)、全画面表示になります。
アレルギー反応によって、複数の臓器に強い症状があらわれることを『アナフィラキシー』と呼びます。アナフィラキシーは、重篤な全身性の過敏反応であり、通常は症状があらわれてから急速に進行し、命に関わることもあります。特に、血圧が低下して意識の低下や脱力を来すような場合を「アナフィラキシーショック」と呼び、直ちに医療機関で適切に対応を進めないと命に関わる重篤な状況になる可能性があります。
アナフィラキシーの症状は、皮膚が赤くなる、息苦しくなる、激しい嘔吐をするなど、複数の症状が同時に急激に進行します。
特に注意すべき症状は、血圧が低下し、ぐったりしたり、意識がもうろうとしたりする状態です。このような場合、アナフィラキシーショックに陥っている可能性が高く、迅速に対応しなければ命に関わる危険があります。
一刻を争うため、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を持っている場合は、すぐに注射を行い、必ず救急車を呼んで医療機関を受診しましょう。アナフィラキシーショックではないと思われる場合でも、ぜん息の増悪(発作)や呼吸困難がみられる場合で、アドレナリン自己注射薬を持っている場合は、症状の経過を観察しながら救急車が到着するまでに注射を行うことが推奨されます。
・皮膚・粘膜症状:かゆみ、じんましん、むくみ、発赤、目の充血や腫れ・かゆみや涙、口の中や唇・舌の違和感や腫れ など
・呼吸器症状:くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、のどや胸が締め付けられる、犬が吠えるような咳、ゼーゼーする呼吸、声がかすれる、持続する強い咳込み、息がしにくい など
・消化器症状:下痢、吐き気、繰り返し吐き続ける、持続する強い腹痛 など
・全身症状:ぐったり、唇や爪が青白い、尿や便を漏らす、脈が触れにくい・不規則、意識もうろう など
小学生や中学生で生じるアナフィラキシーの原因のほとんどは食べ物です。しかし、年齢に関係なく、他にもさまざまな要因がアナフィラキシーを引き起こす可能性があります。例えば、ハチやヒアリなど昆虫の毒、医薬品による薬物アレルギー、天然ゴムによるラテックスアレルギーなどがあげられます。
次の2つの基準のいずれかを満たす場合、アナフィラキシーである可能性が非常に高いと考えられます。
1)皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性のじんましん、かゆみまたは紅潮、口や唇・舌などの腫れ)が、急速に(数分から数時間で)あらわれ、さらに、少なくとも下記の1つの症状を伴う場合。
(1)気道/呼吸:重度の呼吸器症状(呼吸困難、呼気性ぜん鳴、気管支攣縮、ピークフロー低下、低酸素血症など)
(2)循環器:血圧低下または臓器不全に伴う症状〔筋緊張低下(虚脱)、失神、失禁など〕
(3)その他:重度の消化器症状〔重度の痙攣性腹痛、反復性嘔吐など(特に食物以外のアレルゲンへの曝露後)〕
2)典型的な皮膚の症状(かゆみや発疹など)がみられなくても、既知のアレルギー原因物質やアレルギーを引き起こす可能性が高い薬剤や食品を摂取・服用、または注射した後、数分から数時間以内に、急速にのどの腫れや息苦しさがあらわれたり、血圧が下がったりする場合。
具体的な治療はアナフィラキシーの重症度によって異なります。症状が軽い場合には、症状に合わせた治療を行います。じんましんに対しては抗アレルギー薬の内服、咳やゼーゼーする呼吸に対しては気管支拡張薬の吸入などです。しかし、症状が重篤で(重症に該当する場合)、急激に悪くなる場合には、アドレナリンの筋肉注射が最優先になります。
アナフィラキシーが疑われる場合は、全身の状態をよく確認します。だんだん元気がなくなっていくような意識障害がみられる場合は、呼吸や脈拍が弱くなっていないか、皮膚の色が赤くなっていないかなどを確認しながら、必要に応じて一次救命措置を行い、医療機関を受診します。その際、足を頭より高く上げた体位で寝かせます。また、嘔吐しそうな場合には、顔を横向きにします。
◎状況に応じて適切な体勢を取ることが大切です
例えば、呼吸苦があり、ぐったりして意識がもうろうとしている場合は、次のような対応がよいかと思います
・呼吸が苦しい場合
呼吸を楽にするため、背中を支えながら上半身を少し起こし、座位で後ろにもたれるようにしてください。
・呼吸が苦しくて意識がもうろうとしている場合
返事がうつろで意識が低下している場合は、頭への血流を確保することが優先です。この場合、呼吸の状態を観察しながら、足を少し上げた横向きの姿勢で救急隊を待つようにしてください。
本人が「座っていたほうが、息が楽」という場合は、頭への血流が保たれていると考えられるため、無理に横にする必要はありません。ただし、引き続き声をかけて状態を観察し、意識が遠のくようであれば、速やかに足を挙上した横向きの姿勢に戻しましょう。
アナフィラキシーを経験したことがある患者さんは、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)の処方を受けることができます。強いアレルギー反応が出ていると思った場合、アドレナリン自己注射薬を携帯している場合は、使用したうえで救急車を呼び、速やかに医療機関へ向かう対応を取ってください(使用方法は製薬会社のウェブサイトで確認できます https://www.epipen.jp/top.html)。
アドレナリン自己注射薬は、自分自身で判断し、正しく使うことが大切です。処方された場合は、どのような状況で使用すればよいのか、また、正しい使用方法について、医師や薬剤師にしっかり確認し、自分で適切に使えるように準備しておきましょう。
アナフィラキシーの再発を防ぐためには、原因を特定し、それを周囲の人たちと共有し、徹底的に回避することが重要です。以下のような対策を講じることが推奨されます。
・アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を医師から処方してもらい、正しい使用方法をきちんと確認しておきましょう。
・原因となる医薬品やアレルギー物質を明記したカード(名刺サイズなど)を常に携帯しましょう。スマートフォンケースの内側に置くことも有効です。
・アナフィラキシーを発症した場合は、アドレナリン自己注射薬を処方できる専門医を受診し、適切なフォローを受けるようにしてください。
また、ぜん息、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アトピー性皮膚炎などの併存疾患があると、アナフィラキシーが重篤化したり、命に関わる可能性が高くなったりします。これらの疾患を日ごろからしっかりと治療してよい状態にすることも、アナフィラキシー予防に欠かせません。そのためには、生活環境を整え、症状を悪化させる要因をできる限り減らすよう努めましょう(「ぜん息」「花粉症」「アトピー性皮膚炎」の項目を参照してください)。
特定の食べ物を食べたあとに運動をすることで発症するアナフィラキシーを「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」といいます。ただし、この症状は特定の食べ物と運動が組み合わさった場合に必ず生じるわけではなく、生活環境や体調、ストレスなどの変化も関与するのではないかと考えられています。
もし、食事をしてから30分~4時間以内に運動をした際に、呼吸が苦しくなったり、めまいや吐き気、嘔吐、じんましんが出たりして、ぐったりする、または強い苦しさを感じた場合は、速やかにアドレナリン自己注射薬(エピペン®)を使用し、救急車を呼んで医療機関を受診しましょう。
(日本アレルギー学会Webサイトへ)
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=14
日本アレルギー学会アナフィラキシー啓発サイトへ
https://anaphylaxis-guideline.jp/