主なアレルギー疾患
天然ゴム(natural rubber latex)製品に接触することによって生じる接触部位および全身の皮膚症状(じんましん)、咳やぜん鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)などの呼吸器症状、アナフィラキシーショックなどの即時型のアレルギー反応をラテックスアレルギーといいます。
天然ゴム製品は、ゴム手袋、カテーテル・絆創膏などの医療用具のほかに、炊事用手袋、ゴム風船、コンドームなどの日用品として日頃から接触する機会が多い製品です。日本では、天然ゴム製の医療用具については「医薬品等安全性情報No.153」(1999年)により、製品の説明書や容器や包装に、「天然ゴムが使用されていること」と「アレルギーの症状が生じやすいこと」を表示することが義務づけられていますので、天然ゴム製品の識別は可能となっています(https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1103/h0329-1_15.html)。
また、ラテックスアレルギーの患者さんではバナナやアボカド、キウイフルーツ、クリなどの植物性食品のアレルギーとの関連性(交差反応性)がありますが、ラテックスアレルギーの患者さんの30~50%に、これらの食物アレルギーを発症する人がおり、「ラテックス−フルーツ症候群」と呼ばれています。
ラテックスには、いわゆるゴムの木を原料とする「天然ゴムラテックス」と、石油を原料とする「合成ゴムラテックス」がありますが、広く医療分野でラテックスといえば「天然ゴムラテックス」をいいます。
ラテックスアレルギーは、天然ゴムラテックスによるアレルギー反応です。主にパラゴムの木(Hevea brasiliensis)から乳状の液体として得られる「天然ゴムラテックス」にわずか1.5%程度含まれるタンパク質成分がラテックスアレルギーの原因(アレルゲン)となります。なお、石油を原料とする「合成ゴムラテックス」の製品では、タンパク質は含まないため即時型アレルギー反応の原因とはなりません。
天然ゴム製品に残っているタンパク質(アレルゲン)が皮膚に接触したり、汗などにより製品から溶け出したりすることで、皮膚や粘膜に作用し感作(アレルギーの獲得)が成立します。
手の滑りをよくする目的でコーンスターチのパウダーが手袋の内側に塗布されている「パウダー付き天然ゴム製手袋」では、天然ゴムに直接接触する場合だけでなく、多くのラテックスアレルゲンが吸着しているパウダーがゴム手袋を外す際に空中に飛散し、パウダーを吸い込むことでも鼻粘膜などから感作されるといわれています。
なお、手指などの皮膚に湿疹や乾燥があると、皮膚のバリア機能が低くなり、ラテックスアレルギーを発症する傾向が高くなるとされています。
ラテックスアレルギーで最も多い症状は、天然ゴム製品の接触部位に誘発される「じんましん」です。手袋を装着した部分にかゆみや発赤、膨疹、水疱が誘発され、全身性に広がることもあります。最も重篤な場合はアナフィラキシーショックが誘発されます。呼吸器の症状は、天然ゴムとの接触によって誘発された重症例だけでなく、手袋のパウダーに付着したラテックスアレルゲンを直接気道に吸入した場合に生じることがあります。
ラテックスアレルギーの患者さんの中には、果物や野菜を食べたときに口の中の違和感やピリピリ感、全身のじんましん、時にアナフィラキシーショックなどの即時型アレルギー反応を生じる場合があり、これは「ラテックス-フルーツ症候群」と呼ばれています。ラテックスアレルギーの約半数がそのような症状を経験するとされ、ラテックスアレルギーと診断された方は食物への配慮も必要となります。
また、天然ゴムの採取時や天然ゴム製品の弾性や耐熱性、耐疲労特性などを持たせるために使用される製造過程で加えられた低分子量の化学物質(ゴムの加硫促進剤や老化防止剤など)が皮膚に接触することが原因で「アレルギー性接触皮膚炎」が生じることがあります。これはラテックスアレルギーの即時型過敏症に対して「遅延型過敏症」と呼ばれます。
ラテックスアレルギーを診断するためには、ゴム製品との接触によってアレルギー症状が引き起こされた、というエピソードが重要となります。
ラテックスアレルギーが疑われた際には、通常血液検査によってラテックス粗抗原とHev b 6.02(へべイン:主要アレルゲン)に対するIgE抗体価を測定します。また、皮膚テストやゴム製品の使用試験を行うこともありますが、これらの検査ではアレルゲンに直接触れることになるため、重篤なアレルギー反応が引き起こされる危険性があり、緊急時の対応が可能な医療機関で検査を受けることが必要です。
“だんだん元気がなくなっていくようにみえる(意識障害)”
“呼吸や心拍が異常に高くないか低くないか、ゆっくりになっていっている(呼吸障害)”
“皮膚の色が赤くなってきている(じんましん)”
上記のような症状があらわれるなどアナフィラキシーを発症した場合は応援を要請するとともに、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を携帯している方は使用します。
ラテックスアレルギーなどに関するよくある質問をまとめています。
https://allergyportal.jp/faqcategory/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%BC%E6%80%A7%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E%E7%AD%89/
(日本アレルギー学会Webサイトへ)
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=13