人間には食べ物を異物と認識せずに栄養として吸収する免疫システムが備わっていますが、このシステムに異常がある場合や、小児のように消化・吸収機能が未熟な場合は、食べ物を異物と認識してしまうことがあり、この反応を食物アレルギーと呼びます。異物と認識された食べ物の成分(アレルゲン)を排除するためにアレルギー反応が生じて、消化管から吸収されたアレルゲンが血液とともに全身に運ばれるために、全身にさまざまな症状があらわれます。
消化・吸収機能が未熟なことが原因となっている場合は成長・発達とともに症状があらわれなくなり、乳児の約5~10%に認められる食物アレルギーは、幼児で約5%、学童期以降では1.5~4.5%と減っていきます。食後60分以内に症状が認められて医療機関を受診する割合を見ると、0歳が30%で1歳までに半数を占めており、成人にも認められますが、年齢の低い小児に多いといえます。
食物アレルギーの原因となる食べ物には、卵(鶏卵)、牛乳、小麦が多く、そのほかには魚卵を含む魚介類、ピーナッツや果物類、そば、えび・かに(甲殻類)などが報告されています。原因となる食べ物は年齢により変わる傾向があります。また、食物アレルギーと間違えやすい症状に、食物に病原細菌や毒素が含まれて生じる食中毒や、分解酵素がうまく働かないために特定の食べ物を消化できない食物不耐症、保存状態が悪い青背魚などによるじんましんのように食物に含まれるヒスタミンなどの化学物質でアレルギーに似ている症状があらわれる場合もあり、専門の医師による正確な診断が必要となります。
食物アレルギーで認められる主な症状を挙げます。およそ90%に皮膚症状、およそ30%に呼吸器症状や粘膜症状が認められます。
食物アレルギーはアトピー性皮膚炎と合併することが多く、アトピー性皮膚炎の原因が食物と誤解する人がいますが、2つは別々の病気で、食物アレルギーを持つ赤ちゃんのおよそ4人に1人はアトピー性皮膚炎ではありません。一方で、アトピー性皮膚炎が特定の食べ物で悪化することがありますので、このような場合の対応法は医師に相談してください。
食物アレルギーを予防する研究が進められていますが、あくまでも研究であり、確立した方法が公表されるまではインターネットなどの誤った情報に振り回されないで、医師の指導を守ってください。
項目の冒頭で触れたように、小児に食物アレルギーが多いのは成長・発達段階で消化機能が未熟なために、アレルゲンであるタンパク質を消化することができないことが1つの要因と考えられており、成長とともに消化・吸収機能が発達すると食べられる可能性が高くなります。卵や牛乳、小麦は小学校入学前に約8割は食べられるようになります。一方で、ピーナッツ・魚介類・果実・そば・種子類のアレルギーは、なかなか食べられるようにならないと考えられています。
アレルゲンとなっている食べ物を食べないようにします。食品衛生法によりアレルギー表示が義務づけられていますので、食べないようにしてください(あらかじめ箱や袋で包装された加工食品、カン・ビン詰めの加工食品)。